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2006年2月26日 (日)

犯罪被害者支援

凶悪な犯罪が後を絶ちません。凶悪な犯罪が発生する度に、遺族の方がどのような気持ちでおられのかと思うと胸が痛みます。過去、弁護士も検察官も裁判官も、刑事司法において、被害者は「忘れ去られた存在」として置き去りにしていました。現在は、度重なる凶悪な犯罪被害に対して、保護すべしとして、ようやく犯罪被害者の権利が認められつつあります。
こうした犯罪被害者支援においても、我々弁護士が弁護士として行えることがあります。刑事事件の法廷傍聴の付添。マスコミ対応や裁判所・検察庁などの関係機関への連絡。刑事記録の謄写(コピー)。犯罪被害者給付金の申請(ただし、自賠責保険よりも給付金が安くなっているので、さらなる改正が必要です)。場合によれば民事の損害賠償請求。
費用についても、お金がない場合、民事の損害賠償請求以外の部分は、民事法律扶助によって、被害者の方が償還不要な犯罪被害者支援援助というものがあります。
京都弁護士会では、初回に限り無料で犯罪被害者支援相談を行っています。私もその相談のメンバーです。
また、法律的な場面以外のケアについては、各地で犯罪被害者支援センターが設立されている状況にあり、京都にも京都犯罪被害者支援センターがあります。私はセンターの理事もしております。
私は弁護士1年目から、犯罪被害者支援の事件に携わることがあり、当時は今のような制度も全く出来ていない時代でした。
犯罪被害者支援は、私の弁護士としてのライフーワークの一つと考えていますが、相手に資力がないことが多く、民事損害賠償請求をしても回収することが不可能なことも多いため、経済的にも厳しい状況に置かれた被害者の方を見て、口惜しい想いをしています。私としては、国が一定の犯罪被害者の賠償金を立て替え払いする制度を作り、国が犯人や場合によればその犯行に責任を負うもの(安全配慮を怠ったなど)に対し、弁護士を依頼するなどして回収作業を行うという法制度を作ることも、一つの犯罪被害者支援と考えています。国が本気で犯罪被害者支援を考えるのであれば、そのような法整備も行っていくべきです(平成17年度の犯罪被害者支援センターのパネルディスカッションでも同様のことを言っています)。

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2006年2月25日 (土)

委員会活動

LOSTさん、ももさんコメントありがとうございます。弁護士の費用も、弁護士によって変わるので、高いか安いかはなかなか難しいかもしれませんね。 国選弁護のもっとも楽な場合を書いたので、本当はもっともっと苦労があります。拘置所の向こう側で暴れ狂う被告人をなだめて打ち合わせをするとか、情状証人と打ち合わせをしていたら事務所で罵られるとか。記憶がなくなったと弁解しだすとか。追起訴がいっぱいあってコピー代だけで報酬額近くなったしまうとか。影の苦労なので裁判所には見えませんので、報酬は8万円~10万円程度となるのでしょうが、影の苦労が多いにもかかわらず、弁護士からすると、国選は割に合わない仕事で、私などは、弁護士の熱意(職業倫理観)によって支えられていると考えています。

冒頭に掲げた委員会活動というのも弁護士の職業倫理観によって支えられているものの一つです。ある一定の分野で、無償で調査活動をしたり(活動費を入れたら持ち出しですが)、調査の結果人権侵害があると分かれば警告や意見書を出したりして、少しでも人権が侵害されないように働きかけたりしています。私も、公害・環境問題、消費者・消費者金融被害問題、弁護士会の広報活動、犯罪被害者支援を行う委員会に所属しています。

たとえば、プリペイド携帯の本人確認の強化や譲渡禁止は、ヤミ金や架空請求にプリペイド携帯が使用されていることが多かったことから、京都弁護士会で日本で初めて本人確認を強化したり譲渡を禁止すべきという意見書を上げて、総務省に働きかけて、他の弁護士会もこれに追随した結果、立法化されたという経緯があります。この意見書の作成には私も関わりましたが(当時のヤミ金対策プロジェクトチームの座長でした)、こうした活動は全く無償です。

また、私は弁護士会の広報誌てみすに「弁護士七つ道具」と「弁護士の実像と虚像」というシリーズを他の弁護士と共同で執筆していますが、これも原稿料はもらえません。弁護士の実体を知ってもらうべく、せこせこと書いています。自分でいうのも何ですが、わりあい好評のようです。

今週の木曜日も犯罪被害者支援委員会の日弁連委員として東京に出張し、金曜日は金曜日で、司法修習生の民事模擬裁判の傍聴と講評で1日がつぶれました…。

弁護士法一条により、こうした公益活動をすることが義務づけられており、多くの弁護士は、費用を持ち出しして、こうした活動を行っています。どこからもお金は貰えません。

ちょっとわかりにくいテーマだったかもしれないですね…。

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2006年2月22日 (水)

民主党のメール問題

武部幹事長の次男の口座にライブドアの堀江が送金を依頼したとするメール自体の信憑性では争えないとの見解を民主党の幹事が述べているとの記事を見ました。口座を調べることで今後争うということのようですが。

弁護士の立場からいうと、立証可能かどうか不確定なうちは、軽率に指摘するのはやめた方が良かったように思いますね。裁判でも、よく「一発逆転」出来るような証拠を出したがる弁護士がいます。 こうした証拠は掴んだ時は「すごい証拠で、これでこの裁判は勝てる!」と思うようですが、少し冷静になってみると、その証拠だけではどうしようもないことが多いものです。ここからは推測ですが、3点セットで自民党を攻めていた民主党は、メール情報を掴んで、「これで更にたたみ込める」と冷静さを欠いてしまったような気がします。

証拠を掴んで追求する場合、政治家は党で顧問弁護士がいるでしょうから、裁判の専門家である弁護士に、これで追求可能かどうかは確認すべきだと思います。逆にそうした弁護士がいないのであれば、そうした弁護士を複数、顧問ないしはアドバイザーとして依頼しておくべきでしょう。法律関係だけではなく、追求や立証の技術も弁護士は持っていますから。

ことの真偽は分かりませんが、メール自体が本当に虚偽であるとするならば、うがった見方をすれば、わざと民主党に偽のメールを掴ませて、その情報に焦点を絞らせて、3点セットから国民と民主党の目を剃らせるというどこかからの戦略ではないかとの疑いもないではありません。あくまで個人的見解ではありますが。

民主党は3点セットで攻勢に回っていただけに、これで焦点がぼけてしまった感は否めませんし。我々弁護士であれば、これだ!という情報を掴んだ時こそ、逆に冷静になれと一歩引いて考えるトレーニングを積んでいますが、政治家ではそうはいかないのかも知れません。

物事が上手くいっている時ほど、逆に慎重にならないといけないというのが、歴史上の教訓ですから…。

ただし、不祥事暴きで勝負するのではなく、やはり政治理念などで勝負するのが筋とは思います。

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2006年2月21日 (火)

国選弁護士の報酬

刑事事件の場合に国が費用のない人につけてくれる国選弁護士費用。これはどの程度の額なのでしょうか。まずは、国選の場合に弁護士が行う作業を見てみましょう。

もっとも簡単な事件、すなわち、事実関係に争いがない事件では、起訴状を受け取ってから記録のコピーを取り寄せて(3000円から1万円くらい実費が必要)、記録を検討してから(通常検討には2時間程度)、本人に面会に行き(拘置所にいることが多いので、往復の時間と面会時間も合わせると、3~4時間はかかります)、記録が間違いないか検討します。 その後、本人のために「今後監督していきます」という人がいれば情状証人として事務所で打ち合わせをしますが、これも準備と面談で2時間程度かかります。 そして、被告人に裁判で聞くための被告人質問の作成。拘置所での打ち合わせを元に作りますが、作成に1時間程度。場合によれば作成してからもう一度面会に行きます。 あとは弁論要旨といって、最後に被告人のために刑を軽くしてやって欲しいと述べる書面の作成に1時間程度。交通費は国選弁護費用の中から自分で支払うことになっています。

あとは裁判が約1時間。判決立会いが約15分。判決宣告後、裁判所の仮監獄で面談して判決に不服がないか確認。15分程度。これでだいたい事件終了。

これで国から支払われる国選弁護報酬は?

ア、1万円

イ、8~10万円

ウ、50万円

答えは…?イです。安いと思いますか?高いですか?

もちろん、事実関係に争いがある事件では、上記のような時間ではとうてい出来ませんし、もっと裁判も回数が開かれます。また、被害者と交渉するような場合にはもっと時間もかかりますし、気も遣います。示談金をもって、遠方の被害者のところまで出かけたりしたこともあります(帰り道迷子になって土曜日が潰れた)。しかし、それに比例して費用が上がる訳ではありません…。

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2006年2月20日 (月)

ホウレンソウ

tkさん、コメントありがとうございます。私の経験上、相手方となった弁護士で、もめごとを増やす弁護士はそれほど多くありません。多くの弁護士は職業倫理に燃えて辛い事件でも手を抜かずにやっています。ただ、弁護士が大増員が予定されているこれからは、食べるに困った弁護士が某建築士のように、「お金のため」依頼者を食い物にする時代となってしまうかもしれません。内閣府規制改革ワーキンググループでは、大増員しろと言っていますが、大増員によって最終的に被害を受けるのは国民です。このワーキンググループは、規制改革の名の下に偉そうなことを言っていますが、委員は全て法律の実務を知っているとは思えませんし、合格者を増やしたいロースクール出身の学者であったりするので、利益団体の代表の集まりではないかと思っています。

さて、話がそれましたが、弁護士の基本中の基本が、タイトルにあるホウレンソウです。これは、依頼者に対する「報告」「連絡」「相談」が弁護士の依頼者に対する基本姿勢であるという格言のようなものです。

事件がどのようになっているか依頼者に「報告」する。

依頼者に事件の関係で動きがあれば、「連絡」する。

事件については、依頼者の権利義務に関わることであるから依頼者に「相談」する。

当たり前のことでありますが、これが出来ていない弁護士には依頼しない方がよいと思います。

まあ、弁護士の方から言えば、どんなに連絡しても回答がなかったり、連絡もくれなかったり、どんなに相談しても、どんなに説明しても、全然理解してくれない不良依頼者もいるにはいますが…。

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もめごとを増やす弁護士

LOSTさんコメントありがとうございます。もちろん、尊敬出来る裁判官もいますが、大半の裁判官に弁護士は疑いを持っていて、「この裁判官に事件を任せるのは心配だ」と感じていることの方が多いですね。裁判官も弁護士に同じことを言っているかも知れませんが。

そう。弁護士の中にも困った弁護士はいます。我々弁護士は依頼者の利益を守るために戦いますが、場合によれば、和解的解決をすることが依頼者の最大限の利益になることもあります。このような場合、通常の力量のある弁護士であれば、事件解決の「落としどころ」を考えて、依頼者を説得して和解的に事件を解決することもあります。

しかしながら、和解的解決が依頼者の最大の利益であることが分かっていながら、あるいは不幸にして能力がなくてそのような理解すらなく、紛争を拡大して拡大していく弁護士もいます。このような弁護士が相手になった私の依頼者も気の毒ですし、このような弁護士に依頼している相手方も気の毒です。中には、紛争を拡大してさらに着手金を稼ごうしているのではないか…?というような疑いをもつ弁護士もいます。

特に書面で、相手方の誹謗や中傷ばかりしている弁護士は要注意です。このような書面は、裁判官からは馬鹿にされますし、同じ弁護士同士からも馬鹿にされていて、そのような書面を書く弁護士は、とうてい依頼者の利益を守ることなど出来ません。

紳士の戦いの中で、戦うべき時は戦い、和解すべき時は和解するのが理想です。

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2006年2月17日 (金)

疑わしきは検察官の利益に

井上さんコメントありがとうございます。読者がいるのか不安に思っていました。他にも読んでいるという声を聞いて嬉しい限りです。 

さて、表記表題は、我々が刑事弁護をしていると常々実感することです。どういうことかというと、刑事裁判官は、起訴されたもので無罪を争うような事件で、我々弁護士が真剣に無罪を争っており、我々弁護士としても無罪と確信しているような事案でも、ほとんどは軽く有罪にしてしまう傾向にあるということです。 本来の刑事訴訟法の原則は、「疑わしきは被告人の利益に」なのですが、検察官が起訴したのだから有罪だろう、だから有罪という傾向が強いのです。 もちろん、中には証拠をよく見て無罪を書く裁判官もおられますが、私の印象では少数派で、一度も無罪事件の判決を書いたことがないという人もいると聞きます。 

私の尊敬する刑事弁護の鏡といわれるほどの弁護士でも、無罪は、①事件に恵まれ②被告人に恵まれ③裁判官に恵まれないと出ないよと言われています。 もちろん、そのような現状はよくないので我々も全力で頑張るのですが、いかんせん判決を書くのは裁判官で、基本的に有罪と考えているような人たちに当たるとどうしようもありません。日本は法治国家ではなく、人治国家ではないのかという気になることもあります。およそ一般常識が欠けているという判決に出会うこともしばしばです。

その意味で、日本の刑事裁判を是正するために、裁判員制度が導入されようとしていますが、どこまで実効性のあるものかが懸念されます。 本当に無罪の人が、誤った判決で罰せられるということは、国民の裁判に対する信頼を失わせるものですので、日本の刑事裁判官は変わって欲しいと常々思います。

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テレビに出ている弁護士は優秀か?

答えは、人によります(何だと思わないでくださいね)。私も「行列が出来る法律相談所」への出演依頼があったこともあります。でもすぐに断りました。 どうしてかというと、私の依頼者の事件を誠実に出来なくなるおそれがあるから。 弁護士の仕事は地味な時間が結構多いのです。 依頼者との打ち合わせ(打ち合わせしないと事件の受任が出来ませんからね)も時には数時間、数十時間に及びます。 裁判所に提出する文章の作成(土日をつぶして書き上げることもあります)。 法律文献や判例の調査。 事件記録の精読等々。 こうしたことを行うためには、勢いある程度の時間が必要ですし、弁護士も人間ですからこうした作業を行うには自ずと時間的限界、体力的限界があります。 週のうち何日も収録に取られるような状態では、こうした作業を誠実にすることは私であれば不可能です。 ちなみに、私は事務処理能力にはそれなりに自信がある方なので、その私ですらそうです。 テレビに出ている弁護士は、依頼者を犠牲にしているか、スーパーマンなのかどちらかなのでしょう。 ただし、基本的には、相談で、「テレビに出ている弁護士はこういっていたのに先生の答えと違う…」と言われると、正直がっくりきますが…。

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2006年2月16日 (木)

もしも逮捕されたら…

逮捕された場合、当番弁護士というものを呼ぶことが出来ます。1度だけですが、無料です。通常の人は逮捕されてパニックになっているので、まずは当番弁護士を呼んでもらって、自分がどうなるのかの説明を受けるとよいと思います。 当番弁護士は、家族も呼べます。最寄りの弁護士会の方に申し込めば出動してくれます。 ただし、弁護人として活動してもらおうとすると、20万円から50万円くらいの着手金と同額程度の報酬(一般的な事件の場合)が必要となります。重大事件の場合には、法律扶助協会で、被疑者援助といって、弁護人費用を出してくれますが(原則として返す必要はありません)、これは要件がある程度厳しいので、誰しもが使えるという訳ではありません。費用も6万円なので、弁護士がほとんどボランティアでやっているのと代わりがありません。弁護士はお金もうけばかりしている訳ではないのです…。

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2006年2月 8日 (水)

お金がないと弁護士は依頼できないの?

弁護士に依頼するとものすごいお金がかかりそうだしやめておこうかという人もいると思われます。もちろん、たまに、他の弁護士に依頼していた人から、他の弁護士の費用を聞いて、「えっ。こんなに取ってるの」ということもあります。しかし、一般的には弁護士は、依頼者の資力に応じて柔軟に対応していると思われます。一括でお金を支払えない人の場合は分割で引き受けることもありますし、法律扶助といって、国の予算でお金を立て替えてもらえる制度もあります。これは無利息で、月々1万円を返していけばよいことになっていますし、相手方からお金が取れる見込みがある事件の場合には、回収するまで支払を猶予してもらえるケースもあります。法律扶助ではやらないという弁護士もいますが、たいていの弁護士は法律扶助を利用したいといえば、実情に応じてその方法で受任してくれると思います。私も法律扶助でたくさんの事件を引き受けています。

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2006年2月 6日 (月)

のどが痛い

弁護士がのどを痛めると、なかなか治りません。今も少し痛いです。

依頼者との打ち合わせや法廷、法律相談では、ある程度声を張りながら話をしないと聞こえませんので、のどを痛めるとなかなか治りません。

弱り目に祟り目とは昔の人はよくいったものだと思いますが、このような時に限って、証人尋問や法律相談が立て込んでいたりするものです。依頼者もこっちがしんどくても、あまり気を遣ってくれませんしね。

一発でのどの痛みがなくなるような薬が開発されるといいのになあといつも思っています。

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2006年2月 2日 (木)

借金について

借金首が回らない…。どうすればよいのか?こうした相談もよくあります。だいたい、生活費不足の場合、足りないところに借金をするので、元々足りない上に返済が入ってくるため、返済のために次の借入をする…という悪循環となり、このサイクルはとぎれることはありません。しかも、貸金業者は、民事上は取得してはならない違法な金利を取っているため、利息金の返済は大変な負担となります。

このような場合に、弁護士が間に入って出来ることとしては、債務整理、個人再生(ただし、借金総額に制限があります)、破産という選択肢があります。

最近、素人の書いた本などが出回り、あたかもその方法でやれば全てがうまくいくかのような見出しで書店に並んでいたりしますが、事件というものは全て個別の事情があるため、生兵法に頼らず、弁護士への相談をお勧めします。弁護士以外の業種には出来る仕事の制限があるため、全ての業務を行え、もっとも専門的知識を有している弁護士に依頼させることが、結果的には近回りとなります。

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