法曹人口問題を考える会設立趣旨書
参考までに、設立趣旨書を貼り付けておきます。法律新聞に取材を受けたので、そのうち掲載されると思います。
法曹人口問題を考える会設立趣旨書
平成18年3月1日
法曹人口問題を考える会 一同
設 立 の 趣 旨
日本の司法構造を分析し、諸外国の法制度と比較なども踏まえて、日本における適正な法曹人口とその配置について検討し、提言することを目的とし、本会を設立する。
設 立 の 理 由
1、昨年、規制改革・民間開放推進会議のワーキンググループで、毎年の司法試験合格者を9000人に増やそうと言う提案が出され、12月にとりまとめられた「規制改革・民間開放の推進に関する第2次答申」では、来年度(2006年度)以降、3000人の目標を可能な限り前倒し実施することの検討や、3000人を超える、さらなる大幅増員の検討を行うべきであるとのとりまとめがなされました。
2、法曹人口は、ここ数年で相当に増加を続けてきたところですが、今後遠くない時期に3000人の法曹資格者が生まれる大増員時代に突入していこうとしています。しかし、現在の状況は、毎年それだけの法曹の増加を受け止める社会的条件が、どこまで整ってきているのかさえ、はっきりとは見えていない状況にあります。
3、私たちは、あまねく市民が法的サービスを享受できる社会が必要であると言う思いを同じくし、市民が求める需要に我々法律家が対応出来ていないとすれば、そのために必要な措置や増員を推進するべく努力を惜しまない所存です。
しかし、法曹の質を保つ手だてを十分に取らず、あるいは需要を大きく越える過剰な供給がなされた結果、法曹の質に歪みが生じてしまった場合、市民に与える悪影響は計り知れないものがあります。市民に対し、「安心出来る司法」を提供するためにも、安易な増員計画には大きな危惧を抱くものです。
4、ロースクール制度にしても、ようやく始まったばかりで、どれだけの質の確保が可能であるのか、未だ何の検証もされていません。司法修習、すなわち法律実務に就くためのトレーニングを、現在の体制でどれだけ受け入れていけるのかについても、多くの問題が残されたままです。ましてや、司法修習の修了生をどれだけの事務所が受け入れることができるのか、受け入れができない時に、どのような道を選択していくのか、事務所に就職することなく職業的・倫理的訓練はどこまで可能なのか、さらには、弁護士が、法廷活動・事件活動にとどまらず、社会の様々な分野に進出をしていくことは当然のこととして、今後、どのようにそれらの道が広がっていくのかについても不確定であり、多くの問題点が残されています。
5、2007年度に、司法修習の修了生は、一気に増加することが予想されています。その後、毎年の増加もさることながら、法曹人口全体の増加は、急カーブを描いて行きます。その時に、どうなるのかについては、予測がつきにくい状況にあります。
私たちは、今、懸命に、法曹人口が増えていっても、質を確保し、全ての市民の人たちに良質の法的サービスが提供できるよう様々な努力と試みを始めています。しかし、それには自ずと限界があることは誰にでも理解いただけると思っています。
6、3000人を超える大幅な増員は、現在なされているこうした取り組みの経緯及び効果を十分見定めた上でないと決められない性格のものです。司法制度改革審議会や規制改革推進会議(当時)なども、そのように提言していたはずです。増加していく経緯をみる中で、場合によれば、3000人という数字自体、必要が無いという答えが返ってくるのかも知れません。
既に増員を経験している韓国やフランスなど諸外国では、種々の問題が発生しているということが報じられており、他国でどのようなことが起こっているのかも十分に見極める必要があります。
7、以上のことから、本日、私たちは、ここに「法曹人口問題を考える会」を立ち上げ、広く会員の皆様方の参加を呼びかけ、今進められようとしている「超」としか言えない極端かつ無謀な増員計画に対し、強く反対していくとともに、適正な法曹人口のあり方について、検討・研究を進めていくことを申し合わせるものです。
以上
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