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2006年10月23日 (月)

弁護団事件もたいていは弁護士の善意によって行われている

 消費者被害などが起こると、弁護団が結成され、告訴をしたり、消費者被害を巻き起こした会社を相手にして交渉や訴訟をしたりしているケースをよく耳にされると思う。
私自身、過去にもいくつかの弁護団に入り、今は節電器被害京都弁護団の事務局長と電話リース被害京都弁護団の事務局長を兼任している。
しかし、こうした弁護団事件を手がけても、経済的には弁護団の弁護士が報われることはほとんどない。もちろん、依頼者から費用はもらうものの、既に被害に遭っている人たちでもあるし(そして、被害者の人に落ち度もないことも多い)、相手のあることなので解決が出来るかどうか分からないことから、費用は低額での受任となる。
弁護団の人数が多いと、資料のコピー代なども相当かかる。全ての事件が終了して、20名の弁護士にお金を分けた時、1人5万円だったということもあるし、たいていの事件はそんなものである。
この5万円のために費やされた時間は、通常恐ろしい時間単位であり、時給にすれば100円もいっていないこともありうる。弁護団で議論して、担当の割り振りを受けて書面を作成する、依頼者から聞き取りをする、裁判所に行く等々で相当の時間が費やされる。
 弁護団事件はペイしないからと言ってやらない人も多い。
  では、なぜこうした弁護団が結成されるかというと、被害が起きた人を誰かが救済しないといけないという使命感が一部の弁護士にあるからであり、一部の弁護士は、社会正義の実現をしないといけないと考えているからである(弁護士法1条)。そのため、ときには費用的にペイしなくとも、弁護団事件をするのである。
 これはいわば、各個別の弁護士の善意に頼っているに過ぎないので、基盤は意外に脆弱である。
  もちろん、中には売名のためにする者もいるかもわからないが、基本的にはこうした善意に基づいて、また、弁護士自身が、消費者被害を「許せない」と考えて弁護団を結成するのである。
 しかし、これから弁護士が増えて競争競争ともなれば、自分の食い扶持を守るために、こうした事件は手がけなくなっていくのではないかという懸念があり、現にフランスなどではそうした傾向もみられやに聞いている。
  ビジネス弁護士は格好いいしスマートであり、時代にも求められているであろうが、ビジネス弁護士は基本的にこうした弱者の社会的救済は全く行わない。それが弁護士法1条との関係でどうなのかという問題点が根強くあり、競争原理ばかり持ち出して、ビジネスライクな弁護士ばかりでよいのかということは、ペイしない事件をやってきた数多くの弁護士が考えているところである。
 医療や法律というものは、国民の基本的な権利や生命を守るセーフティネットとして、競争原理ばかり導入するのはいかがなものかという観点をみなさんに持っていただければ幸いである。

 なお、弁護団事件に関して、嬉しい手紙を今日いただいた。電話リース被害に関して、消費生活センターの相談員のアドバイスによって契約がクーリングオフ出来て、既に支払ったお金が戻ってきたという人から、弁護団にカンパをいただいたのである。
弁護団として引き受けた訳ではないが、その人の手紙には、「弁護団が消費者の生活を守るため奮闘」していると相談員の方から聞いたということで、カンパがしたくなったと書かれていた。また、その裏には、こうした解決が出来たのも弁護団が電話リース被害を取り上げてくれたおかげだという気持ちもあるものと思われる。
 こうした陰徳とでもいうべき、ゆかしい日本人の心は競争至上主義の中では消されていくだろう。
 必要な競争は行うべきだが、過当競争は倫理の低下を招くだろう。トヨタの中古自動車販売を見てもそうである。嫌な世情である。

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