法テラスに弁護士が確保出来ないのは法曹会の責任か?
読売新聞のコラムか社説に、全国に弁護士が2万人いるのにも関わらず、法テラスのスタッフ弁護士が予定よりも少ない上、若手ばかりで中堅やベテランが少ないことを指摘し、これをもって「何ともお寒い状況」で、法曹会は努力が要求される、と締めくくっている。
一方、今年の新規登録弁護士はほとんどが東京、大阪であり、増員した影響が地方には出ていないという記事も見受けられるところである。
医者も同様の事態であり、医療の過疎化が問題とされている。
そもそも、人数を増やしただけで医療過疎や司法過疎が解消されると考えるのは浅知恵である。現場で働く弁護士や医師の個人的犠牲に期待するとしても限度がある。弁護士がいくら使命感をもって仕事をしていたとしても、それだけに頼るのは限界があることは既に医療の世界で分かっていることなのである。
弁護士も人間である以上、自分の生活設計が必要であるし、また、生計を立てないといけない。安い給与で据置にされた上、契約期間が切れた後の保証は何もないというのであれば、そちらを選ぶよりも、当然「今のうちに顧客を開拓して稼ごう」となるであろう。
自分の人生がどうなるか分からない状況で、「使命感」だけで法テラスのスタッフに応募させようとしても無理があるのである。
これは中堅やベテラン弁護士も同様であって、現実に事務所を構え、顧客を有し、事務員を雇用していれば、これらを全てかなぐり捨てて法テラスのスタッフに応募することは考えがたいし、こうした状況の中応募された方々は苦渋の選択であったと思われる。
日弁連上層部は、「法テラスはすばらしいから応募を」とするが、そんなにすばらしいのであれば自分で模範を示すべきである。日弁連での任期が終わったあと、スタッフ弁護士として7年間地方に行くのであれば、後進も続くであろうが、声だけを出して自分は大阪や東京で稼ぎまくっているというのでは若手もついてこない。同じことは弁護士から裁判官になる弁護士任官制度にもいえるのである。
制度設計が理念だけで行われ、現実の人の行動や考え方を見ないから、蓋を開けたらこのような事態になるのである。
法テラスがスタッフ弁護士を本気で集めたいのであれば、年収を相応の額に増額すべきであるし(少なくとも年々増加させるべきであろう。社会主義では人は動かない)、相当額の退職金制度も作るべきであろう。退職金でもって独立開業してしばらく生活出来るようにしておけば、任期開けの後も心配がない。法テラスには辛い事件が配転されることが予想されるのであるから、社会のために辛い事件をする人にはそれ相応の優遇がされるべきなのである。
今私を含めて消費者問題に取り組んでいる弁護士は、ほとんどボランティアで事件に取り組んでいるが、こうした善意にばかり頼る構造は、いつか破たんを来すであろう(それが消費者被害を巻き起こす側である規制改革委員会のメンバーの望みなのかもしれないが)。
国会議員などに手厚い保障をするよりも、こうした地道な活動をする弁護士に光を当てるべきである。
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