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2006年10月30日 (月)

生き死にの事件とそれ以外の事件

 牧野君コメントありがとう。一般の人にも役立つ情報を掲載したいのですが、中々筆が進みません。
 さて、表題の言葉は私のボスが述べた言葉である(本当の言葉は少し違うのだが、趣旨がわかるようにあらためている)。
   ある時、ボスは私が起案している横に来て、「中君、事件には生き死にの事件とそうでない事件があるんや。生き死にの事件いうのは依頼者にとって本当に絶対にまけたらあかん事件や。それ以外の事件は、依頼者にとっては切実でも客観的にはそうでないことも多い事件や。弁護士は生き死にの事件では絶対にまけたらあかんのや」と言われた。
  私のボスは滅多にこうした言葉を述べない人で、「背中を見て育て」という人であったので、私は感動して、「ハイ」と答えた。思わずメモ帳を出そうかと思った。
そうしたところ、ボスは後ろ手に持っていた記録をすっと出した。
「?」と私。
「あのなあ、中君、実は僕生き死にの事件で負けてしもたんや。君、控訴審からこの事件やってくれへん?」
 どひゃー…。この布石やったんか…。

 ちなみに、その事件は控訴審で私が担当してなんとか和解した。和解するにも一審の認定がおかしいことをある程度主張立証した上でないと和解に持ち込んでもなかなか難しいことが多いから、現場に行き、一から話を聞いて書面を書いたことも良かったと思われる。

 なお、ボスの名誉のため断っておくが、この事件はたまたまであり、ボスは私から見ても、「よくこんなん勝ったなあ」という事件で勝訴してくることもしばしばであった。
私の第3の師匠であるN村T雄弁護士も、君のボスは特異な才能を持っていると滅多に人を誉めないのにボスのことはべたぼめである。
 この事件は非常に和解しづらい事件であったが、二審で一審が維持されると本当に依頼者の生活の根本に関わることになるので、和解で解決しなければならなかった。なんでこの事件を私に持ってきたかにも、実は布石があるが、それはまたの機会にお話しよう。

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