9年前の事件依頼したんやけど…
私が勤務弁護士となってボスが会長で不在の時に、事務所に依頼者が怒って電話がかかってきたと事務員が困っていたので、電話を替わると、「頼んだ事件、どうなってるんですか」と声を荒げている。
よくよく聞くと、9年前に依頼したという。私が勤務弁護士で居た時代ではないので分からないのだが、聞いた以上は私が何とかしないといけない。
とりあえず私も当時事務所に居なかった(というか大学生か修習生であった)ことも説明して、事務所に来てもらうことにした。まずは話を聞かないとどうしようもない。
記録を探し出して読み出すと、確かに記録があった。
中身を見ると、土地を貸していたところ、その上に建物を建てた人が死に、地代も長年に渡り滞っているため明け渡しを依頼したようだ。
ところが、この死亡した人の相続人が山ほどいるようで、当時その事件を担当し、どうやらお金も事務所には入らず少し前に居た勤務弁護士が貰っている模様である。その勤務弁護士が事件をやり出したが、あまりに相続人が多いため放置して独立したようであった(放置するなよ)。
その後、少し前にそのことでクレームが入り、ボスも打ち合わせをしてやりかけた形跡があるのだが、ボスも会長となって多忙であったため後手後手に回っていたようである。
「9年間事件放置かー。えらいこっちゃ。一番悪いのは少し前の勤務弁護士やけど…。そりゃボスも言われないと知らんわな。」と思いながら私が聞いた以上仕方がないので、K田事務員に指示を出し、あまりの戸籍の多さに彼女が「ヒェェー」と悲鳴を上げながら相続人を確定してもらったところ、30人もいた。この人達に訴訟を出して、判決を取ったり明け渡しに同意してもらったりして、何とかこの事件は解決した。
ただ、担当裁判官は記録を読まないので有名な人(弁護士任官)で、法廷に入ってくるなり、「ほ。今日はえらい傍聴人が多いな。」と第一声を上げて、書記官から袖を引っ張られ、「部長。みんな被告です」とたしなめられていたりはしたし(被告が30人いて、呼び出された人で15人くらいは裁判に来ていたのだ。被告の数くらいみといて欲しい)、相続人の中に暴力団関係者がいて法廷ですごまれたりはしたが、無視したりしているうちに無事終わったのであった。
そして判決が確定し、具体的な建物の明け渡しの頃、私は独立することになったのであるが、ボス弁がさりげなく私に明け渡しまでさせようとしてきたので、さすがにそこまで面倒は見られないと考えた私は、さりげなく事務所に置いて独立したのであった。
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