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2007年6月 6日 (水)

要件事実と弁護士

 要件事実というのは、たとえば民事訴訟で原告となって訴える側に立ったときに、自分がこれこれこういう請求をするというのを「請求の趣旨」というのであるが(たとえば500万円を支払え)、この請求の趣旨を導き出すために最低限主張しないといけない事実のことをいう。実際の訴状では、要件事実それだけを書いて事情は別に書くというようなことはあまりなくて、時系列で書いて行く中で自然に最低限主張しないといけないことが入り込んでいるということが多い。たとえば同じ500万円を支払えという中身でも、貸金であったり、贈与されたお金を支払えというものであったり、交通事故の賠償金であったり、不貞行為を働いた時の慰謝料であったり様々である。

 この要件事実はそれなりに分かっていないと、弁護士として訴状を書いた時に、主張すべき最低限が落ちていると、最悪「却下」となってしまう。すなわち、請求として成り立つための最低限の主張すら出来ていないと中身に入らず、入口で斬られて判断すらもらえないことになる。これは弁護士としてとてつもなく格好悪い。

 そうであるから、弁護士も要件事実を無視は出来ない。
 また、司法研修所ではこの要件事実教育に重きを置いているので修習時代はこの要件事実についてある程度勉強する必要がある。

 しかし、弁護士になって学ばないといけないことや考えないといけないことは多々あり、私の感覚では実務家としての弁護士のスキルが仮に100あるとすれば、そのうち1を締めればよい方かなという程度である。あとの99は何かと言われると困るが、依頼者を説得できる能力であったり、説得的な書面を書く能力であったり折衝能力であったりする。経営能力も必要だと言われている。孫子の兵法の心で事件処理をしていくことが必要なのである。

 今の研修所教育では要件事実に重きを置きすぎていて、こうした他の実務家として必要な魂というかそうしたスキルのようなものがなおざりにされているような気もしないではない。ただ、時間が少なくなっているので、やむを得ないかなとも思うが、そうなれば実務家として就職した後にレベルアップするほかないことになろう。

 最近どうかなあと思う相手方弁護士や、こいつが裁判官で大丈夫かいなという例に遭遇することがあるが、修習期間で学ぶことが少なくなった分、実務家としてどうしようもない弁護士や裁判官が増えてはもともこもない。

 やれやれである。

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