« 弁護士の取扱分野 | トップページ | 札幌出張中止 »

2007年9月 7日 (金)

醜状痕と逸失利益

 交通事故によって顔などに傷跡が残ることがある。これを醜状痕という。
 一方、交通事故によりこれ以上治療してもよくならない症状、すなわち後遺症が残ると、その後遺症により将来にわたり働く能力が落ちたとして(これを労働能力喪失率という)、本来であれば得られるはずであった将来の収入を損害として請求できる。たとえば腕を事故により失った場合には、後遺症の等級何級で、労働能力が何%失われたので、これこれの損害が発生したというように計算されるのである。これを逸失利益という。
 また、後遺症があると、そのような後遺症を負ったことに対する精神的苦痛に対して慰謝料が発生することになる。

 ところが、醜状痕の場合、傷跡であるから、労働能力は別段失われていないのではないか、逸失利益はないのではということが問題になるのである。特に男子の場合はこれを認めないで、後遺症慰謝料で調整するということが多い模様である。

 少し前に、男子学生で醜状痕が残っていた事案で、就職に影響が出るということを理由に(もちろん私がそのような主張をし、本人もそう思っていたのであるが)、一部逸失利益を認めてもらった裁判例を取って、事件自体は終了していたので記録も片づけていた。

 そうしたところ、最近この判決が自保ジャーナルという冊子に掲載されていた。自保ジャーナルという冊子は、かんたんにいえば交通事故の裁判例を掲載する冊子である。過去にも他の事例で掲載されたことはあるのであるが、私も人間なので自分の取った判決がこうした冊子に掲載されると悪い気はしない。

 時々画期的決定や判決も取るのだが、雑誌社などに送るのが面倒でついついそうしないので、隠れたよい判決などが埋もれていたりするが、本当はこうした判決例は出来るだけ雑誌社に送るようにして、共通の知識とすべきなのであろう。

|

« 弁護士の取扱分野 | トップページ | 札幌出張中止 »

コメント

中先生、おはようございます。
裁判では、結構、前例、判例を引き合いに主張することが多いというのは、耳にしますが、そういう面でいままでにない判断の裁判例など画期的な判決のデータベース化は重要なんですね。
私は、相続関係などの判例は、民法制定以来、相当の蓄積があると思っていましたが、実は、それほど多くはないと言うことを聞いて、少し意外な気がしていました。

投稿: 相続人 | 2007年9月 7日 (金) 04時46分

 コメントありがとうございます。
 通常の裁判例は「当たり前」のものとしてあまりデータベース化されず、特異な判断がされたものが判例雑誌に掲載されるように思います。
 その意味で、データとしてあるのは特異事例が多いということがいえるのではなかろうかと思っています。
 全く同一の事例というものはないので、判例・先例を引き合いに出すとしても限界はあり、特に特異な事案だとかえって先例としての意義が薄いといえるかと思います。

投稿: 中 隆志 | 2007年9月 7日 (金) 14時27分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 醜状痕と逸失利益:

« 弁護士の取扱分野 | トップページ | 札幌出張中止 »