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2008年5月21日 (水)

刑事記録の死体写真

 裁判員裁判が実施される際、裁判員の精神的負担が軽くなるように、死体の写真などは示さず、イラストなどにすることが検討されているという新聞記事を読んだ。

 確かに、慣れない人にとって死体の写真は耐えられないものであろう。司法修習をすると死体解剖の立会いが検察修習の中であるのだが、死体解剖を見てから肉類が食べられなくなったという人もいるくらいである。

 殺人事件やその他人が死亡した事件では必ず死体の写真が刑事記録に綴られる。我々はプロとして冷徹な目で見ることになるのだが、それでもやはり慣れないものである。一般の人にとって耐えられないと予想されることはわからないではない。

 ただ、量刑を決める時に、生々しい写真を見ているのと(修習時代に放火殺人の記録を見たが、これもまた衝撃であった。甘っちょろいアマチュア的気持ちが吹っ飛ばされる思いであった)、イラストとでは裁く方の受け止め方も違うのではなかろうかとも思う。
 死んでしまった人は何もいえないので、生きている人間がその死体から様々な情報を得て、加害者を追求していくという図式になるのである。死者は死体でしか物を語れないのである。
 イラストで果たして真実に踏み込むことが出来るのかは未知数であろう。
 裁判員裁判には様々な批判があるし、国民も諸手を挙げて賛成している訳ではない。
 しかし制度として始まった時には、応対していかなければならないのである。

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コメント

中先生。

ご無沙汰しています。現在名古屋のAkiyukiです。
検察庁と法医学学会が協力して法医鑑定書をCGを使って説明することを検討中というニュースでしたね。
CGがどれだけリアルなものかは分かりませんが,検察庁は死体の生々しさも理解して頂く必要があるという立場だと思いますので,ある程度リアルなものになるのではないかと推測しています。
個人的には,生の写真を見せることは必要不可欠という立場ですし,現在の刑事記録は,法医学的観点から腹の中を開けてみたり,頭皮を剥いでみたり,必ずしも立証に不可欠でない写真も多数含まれていますので,必要最小限の写真に絞れば,心理的負担も最小化できるのではないかと考えています。
その上で,選任手続の段階で,生々しい写真を見ることに耐えられない人は辞退が許されるようにして,本当に心理的に耐えられない人を保護することも考えられるべきでしょう(どのような立証をするかは公判前整理手続の段階で確認できますので。)。

このニュースに対するネット社会へのコメントは厳しいものが多く(というか,裁判員制度自体に反対するものがほとんどです。),制度を成功させようと努力している者として少しショックを受けています。
そんな中,制度への賛否はともかく,制度へ誠実に対応されようとする先生のお姿を大変心強く思います。


余りにも嬉しかったので,突然ですがコメントさせて頂きました。


それでは,またサッカーの練習にてお会いできるのを楽しみにしています。

投稿: Akiyuki | 2008年5月21日 (水) 23時07分

私は裁判員制度に興味があるし、裁判員をやってみたいなーと思っています。解剖写真をCGにする件で昨日は実習生達と語りました。「一般人にとっては裁判員になること自体心理的負担になる場合もあるし、解剖写真だけ心理的負担の考慮して無理にCGにしなくてもよい。」「CGの信頼性はあるのか?」「傷ができていく過程を連続イラストで表すアイデアについて興味がある。そのほうが理解しやすい。」「CGのほうがたしかに心理的負担が少なくなるため、いい。」「損傷の場合、創縁とか断面図もCG化できるからより分かりやすい。」などいろんな意見がありました。鑑定書とかも分かりやすく記載しなくてはならなくなるのでしょうかね。いずれにしろ興味がある話題です。 

投稿: ミッフィー | 2008年5月22日 (木) 10時41分

コメントありがとうございます。

制度が法律で出来た以上は、やらざるを得ないのですよね。裁判員に本当に裁いてもらうという観点からは、死体の写真を見た上で、判断してもらうということが必要だと私も考えています。

CGはどうなのでしょうかね。最近テレビでよく使われていますが、CG自体がいいものを使わないと、それだけで嘘くさく見えてしまっているものもあるように思います。
ミッフィーさんは医学系の偉い方なのですか。実習生と語るなんて。

投稿: 中 隆志 | 2008年5月23日 (金) 20時22分

医学系の所属ですが、偉いどころか、駆け出しです。。ネットで自分の名前を検索しても(結構みんな一度はやってみるらしい)自分由来のものは10件くらいしかなかったです(>3<)III.....。でもこれから偉くなるかもしれません。(笑)私のやっている研究には法律も微妙にからんでくるので、先生のお話は参考になります!

投稿: ミッフィー | 2008年5月24日 (土) 09時48分

 私は理系の知識や能力はとんとないので、理系の方が様々な発明や発見をされる能力には敬服します。
 法律家は基本的には起こったことをどうするかという対応を考えることが多いので、将来に向けて研究されたりする能力がある方は素晴らしいと思います。
 

投稿: 中 隆志 | 2008年5月25日 (日) 21時38分

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投稿: vabljjc | 2009年6月25日 (木) 19時53分

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