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2008年5月 9日 (金)

読書日記5月9日

今日は夕方滋賀県で聞き取りをする予定がキャンセルとなったので祇園に飲みにもいけず。
ここ最近の読書日記。

海音寺潮五郎「武将列伝 戦国揺籃編」。絶版になっていた海音寺の武将列伝の新装版である。中古本紙上ではもの凄い高値がついていたので、購入しなくてよかった。限られた字数の中で海音寺が武将について語っていく。歴史好きであればこれははずせない一冊である(というか源平編とか他にもいろいろ新装版で出ている。)。

C.J.ボックス「神の獲物」。海外ミステリーである。アメリカで絶賛され、新人賞なども総なめにして、向こうでは今第8作までが出ているということで購入してみた。読み物としては悪くないが、名作ミステリーに比べると設定が甘いし、ミステリーの大原則を破っている点が私からすれば容認できない(そういう意味では本格推理ではないのかもしれないが…)。気軽に読む読み物としてはよいだろう。
 ちなみに、海外ミステリーで私が最高傑作と思っているのは(正しくは海外サスペンスかもしれないが)、ウィリアム・アイリッシュの「幻の女」である。

 司馬遼太郎「故郷忘じがたく候」。秀吉が起こした朝鮮役の際に島津家によって韓国から連行された人々が、島津の領国でどのように生き、どのように故郷を思ったかを書いた作品外2つの短編が収められている。司馬先生は本当にエピソードを描くことが上手い。
 詳しくは一読されたいが、随所に描かれているエピソードを読めば、故国から連行された彼らの悲哀に心ある人は泣くであろう。
 細川ガラシャの生涯を描いた「胡桃に酒」も秀逸である。細川幽斎の息子である細川忠興はその妻ガラシャを愛するあまり家臣や外の男にガラシャを見られることを嫌い、ガラシャを見た庭師を切り捨てたという逸話が残されているほどガラシャを愛したとされる(これを愛と呼べるかは別として)。この狂気の忠興を随所にエピソードを入れながら描いている。

 司馬遼太郎ほか「司馬遼太郎の日本史探訪」。司馬の本ばかり読んでいるが、それほどためになるのであるから仕方がない。NHKで放送されたテレビ作品の中での対談をおこした本。松本清張とか様々な大家やこの中で出てくる歴史上の人物の子孫も対談相手として登場する。
 この中で、司馬は、「新撰組は本当に強かった。尊皇志士が京都で偉そうに歩いていても、向こうから新撰組が来たら皆蜘蛛の子を散らすように路地へ逃げた。治安警察としては世界最強ではないか。その中でも土方歳三は怖かったそうだ。」という趣旨の発言をしている。

 信州歴史時代小説傑作選第1集「武将列伝」。信州にゆかりがある武将の物語を集めたハードカバーである。一つ一つは短編なのでそれなりの時間があれば読める。お勧めは司馬遼太郎が後藤又兵衛と真田幸村を描いた「軍師二人」と、池波正太郎の「信濃大名記」である。

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コメント

目に飛び込んできたのは、ウィリアム・アイリッシュ。
一時期この方にのめりこみました。ああ、懐かしい。
先生のようにたくさん読みませんけどたま~に、自分の好きな作家の名前をみると大変嬉しく思います。そうすると先生のおススメの本は読まなくちゃあ、読んでみたいなあとも思うのです。

投稿: ふなま | 2008年5月 9日 (金) 23時23分

 ミステリーの鉄則というものがあると言われているのですが、最近ミステリーとか本格とかいわれている作品をたまに読むと、この鉄則を平然と破っているものが多いのです。
 古典作品はこの鉄則を守った上で我々に「犯人は誰か」と挑戦してくるのでフェアだといえますが、早い段階で物語に出てきていない人物が犯人であるとか、超常現象を関わらせるとか、偶然にしか起こりえない自然現象を関わらせるとか、「何じゃこりゃー」という作品が多いですね。
 私が横溝正史を愛読していたのも、横溝正史はこうした本格の鉄則を必ず守っているし、そのトリックにうならせられるからです。ちなみに私が横溝の作品で最高傑作と思っているのは「女王蜂」。
 もちろん海外作品の古典も大変面白いものがありますから、巷にあふれる良質でないミステリーと題する作品よりは、ミステリーを読むならまずは古典を読むべきだと思います。

投稿: 中 隆志 | 2008年5月11日 (日) 23時46分

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