読書日記5月16日
読書日記。
「新選組秘帖」中村彰彦。新選組の短編集。この中では、昨日のブログで書いた島田魁の「巨体倒るるとも」と、「五稜郭の夕日」が秀逸。島田魁の己を曲げない姿には涙。五稜郭で死に損なったと感じる土方歳三の小姓の悲哀を書いた五稜郭の夕日も涙させられる。
「宮本武蔵」司馬遼太郎。真説宮本武蔵という短編は読んでいたが、長編は読んでいなかったので購入してみた。吉川英治の宮本武蔵が聖人君子のようであるのに対し、求道者武蔵として司馬も描いているが、人物像が随分違う。真実に近いのは司馬の方であろう。武蔵は生涯お金に困ることがなかったエピソードとその理由についても書かれている。
「一夜官女」司馬遼太郎。短編集である。外でも掲載されていて既に読んでいる作品もあったので、実際に読んだのはこの中で2つほどだが、宮本武蔵と闘って滅ぼされたとされている吉岡一門に伝わる史料での武蔵との対決を描いている。吉岡一門に伝わる史料によると、武蔵と吉岡直綱(武蔵側から見た史料では吉岡清十郎。)との戦いは木刀同士でしかも板倉伊賀守の廷内で行われ、相打ちであったという。この史料の紹介は、戸部新十郎という作家の日本剣豪譚という作品の中の宮本武蔵伝でも伝わっていて、これによると、吉岡直綱との試合は相打ちであり、吉岡の次男とは武蔵は試合をしていない。少なくとも、これより少し後に吉岡一門に連なる人物が刃傷沙汰を起こした記録があるので、武蔵によって滅ぼされたというわけではなそさうである。
「残虐記」桐野夏生。失踪した作家が少女監禁事件の被害者であったという書き出しで始まる物語。事実を少しずつ変容して書いているので、訳がわからなくなるところがある。それを狙っているのだと思う。
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