夜店
いま、沢木耕太郎の深夜特急を読み始めている。この名作はかなり前に知っていたが、若い頃に読んで、下手をして何もかも捨てて旅行にでも行ってしまったらどうしようかと思って中年になるまで読むのを取っておいたのである。今は自分の事務所もあるので、そんな気持ちになっても思いとどまれるだろうからである(ただし、旅行には行きたくなるだろうとは思う)。
これを読んで、すぐに会社を辞めて東南アジアに旅立ったものがどれほどいたかと考える。
今はまだ読み始めたばかりであるが、香港の夜の屋台のことを書いたくだりがあり、それを読んでいて、大阪に昔よくあった夜店を思い出した。
私が生まれてから17年間住んでいたのは大阪城の東で、大阪の中でもそれなりに柄の悪い地域であった。
夏になると、6のつく日はトキワ通りというところで、8のつく日は本町通りというそれぞれ小さい商店街で夜店が出るのである。トキワ通の方が屋台の数が多かった。
スマートボールとか、イカ焼きとか、人形の型抜きとか金魚すくいだとか、あてもの(くじを引いて、特等が出たら、一番大きいサイズのガンプラがあたる。今ではたぶん特等は入っていなかったであろうなと思うが、当時はあれが当たったら羨望の的になるなどとわくわくしていた)とか、子どもの心を躍らせる屋台がいっぱいあった。
私は金魚すくいが得意で、屋台のオジサンから「この子のようにやらなあかん」といわれることがしばしばであった。
夜店のある時は、お年玉の残りか、親から500円くらいをもらって、その500円をどう使うかを真剣に考えるのである。たいてい100円なので、5回を何に使うかをもの凄く悩みながら屋台を回る。
ああいう屋台を出している人はテキ屋というのであろうが、そういう屋台も私が大きくなるにつれてどんどん少なくなり、そのうち夜店も開かれることがなくなったように思う。
たまに京都の祭りの時期などに屋台が出ているが、大阪の夜店のうさんくささがなく、たいてい食べ物を売っているだけであることが多い。また、夜店は夜であるからこその雰囲気があるのでよいのであって昼だと雰囲気が半減する。
今だと大人になったので、500円といわず、端から端まで全ての屋台制覇とか出来そうである。夜店の大人買い(ただし、リンゴ飴は嫌いなのでいらない)。
深夜特急の一巻を読みながら、どこかで夜店やってないかなあと思ってしまった。
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