読書日記1月8日
昨日、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」を読み終えた。文春文庫で全8巻。
読み終えた今は大きい喪失感がある。
私にとって龍馬はこれまで何となく毛嫌いする存在であった。
世の中であまりにも英雄視され、人気があり、偶像化されていることでかえって敬遠してしまっていた。
その人気は司馬作品によるものであろう。
その意味で、竜馬がゆくを読むというのはその敬遠しているものに自ら近づくという行為でもあった。
おそらく、竜馬を読むことによって、自らが竜馬を毛嫌いしていたというのは実は憧憬の裏返しであることを認めることになることを自ら分かっていたからではないかと思う。
ご承知のとおり竜馬は薩長同盟を成立させ、自らも海援隊として倒幕の一勢力となり、大政奉還の案を作り、五箇条のご誓文の原型となる船中八策を作ったということで、竜馬がいなければ明治の世がやってきたかどうかは分からないのである。
司馬は竜馬を奇跡であるといっている。
司馬も竜馬の死は書きたくなかったのであろうか、死のところは物語全体からするとあまりにあっさりしている。
ただ、竜馬自身は明治になってしばらく忘れられていて、その後一時期有名になった時期もあったようであるが、何よりも竜馬は司馬作品によって戦後のブームを呼んだといえるだろう。
この作品が私が生まれる数年前に完結していることに驚きを禁じ得ない。40数年前の作品とは思えないのである。
司馬は晩年国を憂えるようになり小説を書かなくなってしまったが、もっともっと小説を書いて残して欲しかったと思うのである。司馬の配偶者である福田みどりさんも小説をもっと書いて欲しかったといっておられる。
正しくは龍馬の表記のようであるが、龍馬は死ぬことによってさらに英雄としての地位を大きくしたようである。非業の死が後の小説家によって材料ともなるからである。
なんとなく散漫な感じでしか書けない。
そのうちぽつぽつと龍馬のエピソードを書くこともあろうかと思うが、今はただ読後感に浸りたい。
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コメント
僕も昔読みました。8巻だけですが…。
投稿: 豆重 | 2009年1月 8日 (木) 20時55分
是非全巻読みましょう。
龍馬のみならず、周辺の人物の様々なエピソードが描かれていて、勉強になります。
投稿: 中 隆志 | 2009年1月12日 (月) 21時44分