読書日記12月21日
「川釣り」岩波文庫。井伏鱒二著。
釣り好きの井伏鱒二による、川釣りに関して書かれたエッセイ集。井伏鱒二も膝が悪かったというくだりを読み、私も膝が悪いので親近感を覚えたりした。釣りのことを空想して仕事が手につかなかったり、釣りに行って変な若者に白髪を釣り糸代わりにするのだと言って抜かれたり、知らずに密漁をして偉そうにしかられたことに対していつまでも怒っていたり・・・。井伏鱒二という作家に親近感を覚えてしまう作品である。
「高熱隧道(こうねつずいどう)」文春文庫。吉村昭著。
黒部第三ダム建設にまつわる技師たちの苦闘を描いた作品。トンネルを掘り進めるにつれて上昇する岩盤温度。160度をも越え、人間が作業する限界を越えた労働環境の中で、大金をつかむために作業をする人夫たち。人夫たちの命をもかえりみず、技師としての熱意からトンネルを掘り進める技師たち。登場人物は架空であるが、内容は実際の話である。このような悲惨な工事があったのかと思うと、先人たちのすさまじいエネルギーを感じる。これは無茶苦茶おもしろい作品。
「十万分の一の偶然」文春文庫。松本清張著。
長編ミステリー。アマチュアカメラマンによって撮影された交通事故現場の写真。年間の報道大賞を受賞したが、あまりにも事故直後であったがために、様々な疑惑や憶測を呼ぶ。事故は作り出されたものなのか。アマチュアカメラマンの狂気による自作自演なのか?
内容的には他の名作と呼ばれている作品と比較すると、いまいち劣る気が私にはしたが、カメラにとりつかれた人たちの狂気を浮き彫りにしたという意味では佳作であろう。
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