読書日記6月16日
旅行中もたくさん本を読んだ。
「東京島」新潮文庫。桐野夏生。
最近文庫化されて本屋に平積みになっていたので購入。島における極限状態を描いた作品は多く、その閉鎖された空間における人間心理の異常性や通常の生活では考えられないほどの堕落や人とのすさまじい関わりを描いた秀作が多い。
ただ、吉村昭の漂流記に比較して、生きることへの食べ物をどうしていたのかとか、ラストにおける生物学的不可能性等々、細部のプロットの甘さが際だっていたように思われる。そのあたりが残念である。
「この国のかたち 二」文春文庫。司馬遼太郎。
司馬遼太郎が日本史について書いた歴史エッセイ集だが、小説の中で結果として使われなかった歴史的背景等についていきいきと書かれていて、本当に勉強になる。
「赤い雲伝説殺人事件」広斉堂文庫。内田康夫。
飛行機の中で気楽に読むのに持っていった文庫。いわゆる浅見光彦シリーズで、推理小説としてはすさまじい欠陥(というか正直推理小説ではない・・。話によっては犯人が後から出てきたりするので、なんじゃそりゃーって感じになる)を有しまくりのこの作家の作品だが、主人公に親しみが持てるのと、気楽に読めるので時々読んでいるのである。この作品も出来はいまいちとしかいいようがないのだが、そういう作品として読む分には時間つぶしにはなる。
「コンスタンティノープルの陥落」新潮文庫。塩野七生。
トルコに行くので、飛行機の中でイスタンブールのことを知ろうと読んでいた。これを読んでいたおかげで、イスタンブールの市街を見るのにいい予備知識を得られた。塩野七生の乾いた文体で淡々とビザンチン帝国最後の日が語られる。
「聖教会最古の秘宝(上)(下)」角川文庫。ポール・サスマン。
歴史的事実をもとに現代サスペンスに仕上げる手法が最高のポール・サスマンの二作目。前のカンソビュセス王の秘宝を描いた作品がよかったので旅行中の暇つぶしに持っていったが、ラストにどんでん返しがいくつもあるところは前作同様で、読み物としては絶品である。
「菊池伝説殺人事件」角川文庫。内田康夫。
なんじゃそれは・・・というお話であった。
「王城の護衛者」講談社文庫。司馬遼太郎。
幕末に京都守護職であった松平容保の悲劇を描いた表題作ほか、司馬の短編集。
松平容保の晩年が寂しかったが、山形有朋が、松平容保家に伝わる天皇からの直筆の書簡を買い戻そうとした時に、松平家がこれを拒絶したというくだりがもっとも好きである。
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