読書日記7月4日
「幕末動乱の男たち(下)」新潮文庫。海音寺潮五郎。
幕末の男たちを描いた列伝の下巻。
書かれていた中では、吉田松陰のものがおもしろかった。
修学旅行で松蔭神社に行き、学業成就のお守りを買ったことを覚えている。
そのときは吉田松陰がどのような人物であるかも知らなかった。
松陰の薫陶を受けた人物たちが、その後明治維新で活躍するのだが、この列伝を読んでいると、松陰は師匠ではあるが、弟子たちも手を焼くような師匠だったようである。
思いこんだら一途で、弟子たちの言うことは聞かないのである。
ただ、そうした欠点があったからが故に、余計に松陰は師匠として愛され、後の世まで語り継がれることとなったのではないか、という思いを持ちながら読んだ。
欠点のない人はおもしろみがないからである。
ただ、その欠点が、愛嬌になるような欠点でないといけないのだが。
「虞美人草」新潮文庫。夏目漱石。
これは前に読んでいたが、確か読んだのが20歳そこそこで、筋もあらかた忘れていて、自宅に文庫があるのも忘れていて全く同じ本を買ってしまった。
明治の当時、同業者からは相当な批判を受けたというのが虞美人草という小説であるが、しかし、明治、大正、昭和ほ経て、平成の世にすべての作品が読める作家というのがどれほどいるかと考えてみるに、当時の批判はあたっていたのだろうかと考えてしまう。
展開がやや急であり、最後は面食らうところもあるが、登場人物がある人間の型を描いていて、それぞれのキャラが立っているという意味では、最近の浅薄な小説などは話にならないであろう。
登場人物の中では、宗近君と、小夜子さんが好きである。
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