「宇宙はほんとうにひとつなのか」村山斉。ブルーバックス。
最新の宇宙論について平易に書かれた新書。ただし、平易ではあるが、書いてあることはわからないことだらけである。
宇宙の構成は、原子が4%しかなく、残りの96パーセントは正体不明の暗黒物質と暗黒エネルギーであるというのである。
突き詰めていくと、暗黒物質や暗黒エネルギーがこの宇宙に存在するためには、異次元の存在と、多元的な宇宙が存在しなければ説明がつかないのだという。
読めば読むほど訳がわからなくなる。あまり突き詰めて考えると頭がヘンになりそうなので、適当に読む方がいい類の本である。
「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」増田俊也。新潮社。
柔道史上最強の柔道家である木村政彦。彼の名を知る人は少なかった。しかし、グレイシー柔術が最強の名を恣にした時に、グレイシー一族からは、日本の柔道家である木村政彦を尊敬しているという言葉が出て、木村の名が脚光を浴びた。
戦前戦後の格闘界についての史書のようであり、最強であったにもかかわらず、力道山に半殺しにされた木村政彦の哀しくも破天荒な人生について語った書でもある。
興味のない人には全く無価値の本であろうが、格闘界に興味がある人には一読の価値のある書。もちろん私は後者であるから読んだのだが。
「制服捜査」新潮文庫。佐々木譲。
暴雪圏がまあまあの作品だったので、その前の作品ということで、本屋に平積みにされていたので購入して読んだ。
情景描写などが少ないので、読みやすい作品であるが、人生において読まなければならないほどの価値はなさそうである。
「上杉謙信の夢と野望」歴史新書。乃至政彦。
私がもっとも敬愛する戦国武将である上杉謙信の生涯についてある程度はしょって書かれた新書。
後の世に、豊臣秀吉が、川中島の戦いを評して、無駄な戦いをしたといったというが、川中島の戦いは、戦国の世を終わらせることにとって、極めて重要な位置をしめており、上杉謙信にはその秘策があったという観点で書かれた新書。
また、武田信玄に比べて、謙信は権謀術作などはしなかったように見られているが、実はその影で多数の調略を仕掛けている事実など、謙信の真実の姿を歴史的資料から明らかにしようとしている作品といえる。中々興味深い作品であった。
「霧の塔の殺人」角川文庫。大村友貴美。
横溝正史賞を受賞した人の三部作の3作目。年末年始の暇つぶしに読んだ。
本格推理小説の条件を満たしていないので、推理小説と呼んでいいのかという気もする。まあ、読まなくていいだろう。
「虎の夢見し」幻冬舎。津本陽。
私が愛読する歴史小説家の一人である津本陽の最新刊。内容的には、少し薄い気がした。これは、もともと別れて連載されたものをまとめたからであろうか。物語としてはぶつ切れになってしまっている。
津本陽が歳がいったため、「下天は夢か」などのような作品が描けなくなったとは思いたくないのだが。
津本作品の中では、私は人には奨められない。