読書日記5月21日
「硝子戸の中」新潮文庫。夏目漱石。
夏目漱石は日本人が読み続けるべき作家だと私は以前から思っているが、司馬遼太郎先生もそのように言っておられるし、最近は村上春樹氏も講演会で漱石が好きだというようなことを発言されているのを聞いて、その意を強くしている。
一気に読めばよいのだろうが、他にも読みたいものもあるし、一気に読むのがもったいない気がして、時々漱石の未読の作品を読んでいる。
これは日々の漱石の思いなどを綴った作品。胃の調子がよくならず気分がめいっている漱石の気持ちがわかるような気がした。
「逆説の日本史 19」小学館。井沢元彦。
ずっと愛読しているシリーズの最新刊。ただ、前から言っているように、紙幅を稼ぐための繰り返しが多すぎる。それがなければ半分程度の薄さになる本だと思っている。書いてあることはよいのだが、あまりにも無駄が多いと駄作になりかねないと思う。そこがもったいないとはいえ、歴史の再確認、勉強になるシリーズ。
「上意討ち」新潮文庫。池波正太郎。
池波正太郎の短編集。あまりいい出来ではない短編が多かったように思うのと、版権の関係か、他の文庫で収録されていて、既に読んでいたものも収録されてあった。
土方歳三が主人公の「色」という作品は、確か池波先生が母親か何かから聞いた、「新撰組の土方の情人がどこそこの未亡人だった」という話からヒントを得たと聞いている。
「闇の奥」光文社古典新訳文庫。コンラッド。
昔からの私の読書には偏りがあり、せっかく古今の名作があるのに読んでいないのは人生の愉しみの一部を放棄しているような気がして、40歳を過ぎたころから古典の名作を意識的に読むようにしている。
これもその流れで読んだ作品。最近は、古典の名作のようなものは、若い時に一度よくわからず読み、ある程度人生経験を経てから読み、老境に達した時にもう一度読むというような読み方をするのがいいような気がしている。
私は若い頃は古典の名作を読んでいないので、今はじめて読むのであるが、正直、若い頃であれば全くわからなかった作品が、「わかる」ような気にはなれることが多い。まだ若いといわれればそれもそうなのだが。
このコンラッドの作品は正直よく分からない作品で、解説も読んだがそれでも分からない。
そうした作品もまたあるのだろうし、それでもなお今日に残るということは、そこに何か人を打つ何かがあるからだろう。
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