読書日記8月7日
「雨・赤毛」新潮文庫。モーム。
モームの短編集。雨という話がいいと聞いたので、世界文学に疎く、また、学生時代はミステリーと歴史小説ばかり読んでいた私は未読であったので読んだ。
余韻を残す結末と、実際に起こりうる人間心理と人間の心の動きを描いているという点で、雨は短編史上最高作品の一つといわれている理由がわかった。
きちんと話の結末がつくというところと、余韻を残すというところが小説にとって重要だと考えているのだが(その意味で、村上春樹の作品は何も結末が分からず、余韻だらけで終わってしまうところが小説としてどうなのかという個人的意見を持っている)、その意味でも傑作である。
同時に収録されている赤毛という作品も、人間が陥りがちな心理展開を描いていて、ストーカーをする人などはこれを読んでみたらどうかと思わせる作品である。
ホノルルという最後の作品も同様で、池波正太郎作品で出てくる人間描写に通じるものがある。
「大いなる眠り」ハヤカワ文庫。レイモンド・チャンドラー。
村上春樹訳のチャンドラーの4作目で、ハードカバーで既に持っているのだが、チャンドラーの熱狂的ファンであり、全作品を持っている私としては、文庫版も購入して再読するしかないのである。文庫版で少し訳に修正が入ったということもあり、非常に楽しんで読んだ。
この作品自体、昔の訳を併せると既に4回目か5回目になるのだが、読む度に発見があり、生涯にあと何度かは読み返すことになる作品になるだろうと思う。
解説で村上春樹が書いているように、作品の出来としては、ロング・グッドバイが最高作品ということにはなるだろうが、これがいわば長編デビュー作とすれば、作品としてのインパクトは大いなる眠りの方があるというのは分かる気がする。
この中で主人公のマーロウはまだ33歳であるが、43歳の私などより老成していて、自分の芯というものがあり、のたれ死ぬ自由とともに、自らの規範に従って行動する自由というものを持っているということに惹かれるのである。
中々マーロウのような男にはなれないが、少しでもマーロウのような男になれるよう精進したいと思うのである。
一人でも多くの人に読んでもらいたい作品の一つである。
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