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2016年6月28日 (火)

読書日記6月28日

「池澤夏樹個人編集 日本文学全集17 堀辰雄 福永武彦 中村真一郎」

 池澤夏樹氏が個人編集する日本文学全集の一冊。
 私のように文学に疎いまま40代になった人間にとって、こういう全集は新しい作家に出会えるし、文学の奥深さを教えてもらえるのでありがたいのである。
 堀辰雄といえば、「風立ちぬ」が有名であるが、ここに収録されているのは蜻蛉日記をベースにした小説2編である。
 王朝時代の男女の心の動きが分かるし、現代の人間の心の動きにも通じる。
 読む価値のある2編である。
 福永武彦という作家は、情けないことに私は全く知らなかったのであるが、池澤夏樹氏の実父であり、秀逸な作品を送り出している作家ということがこの全集を読んで分かった。
 あまりにも作品がいいので、読み終えた後作品を10冊ほど購入してしまったほどである。
 心が落ち着いている時にじっくりと読みたいものである。
 ここに収録されている作品は、「深淵」「世界の終わり」「廃市」という3編である。
 暴力で犯されたがその男性と一緒にいる敬虔なクリスチャンの女性の心の動きと放火殺人犯の男の心の動きを対比して描く「深淵」。
 狂気の境で苦しむ妻を描いた「世界の終わり」。
 四角関係とでもいう関係性を描いた「廃市」。
 3編とも非常に秀逸な作品であった。
 福永武彦の長編を読むのが楽しみである。
 最初は何を書いているのか分からないが、途中から物語が急展開を迎える異国の女性との交流を描いた中村真一郎の「雲の行き来」。
 どれもが人生に必要不可欠ではないかもしれないが、人生を豊かにしてくれる作品であると感じた。

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