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2017年7月25日 (火)

読書日記「関東戦国史 北条VS上杉55年戦争の真実」

 角川ソフィア文庫。黒田基樹。
 真田丸でも時代考証を担当された筆者の関東における戦国時代を描いた文庫である。

 史料を丹念に確認し、事実関係を明らかにする学術的態度はこの書籍でも変わりがない。
 上杉謙信を世の中に言われているような「義」の武将、「聖将」ではなく、関東に出兵した理由についても越後が飢饉であったためなど、これまで描かれたものとは違う論拠を提示するなどしている。
 謙信は不敗といわれているが、これを読むと何回か負けている。
 北条氏康も、関東管領の地位に就いていたことがあることは情けないことに知らなかったので(山内上杉家と二つの管領家があったのである)、勉強になった。
 後に上杉と北条が同盟を締結した際、管領は上杉謙信に一本化され、それ以降は北条家からの書状は上杉謙信に対して「山内殿」としているなど、通好みの史料解説もされており、興味深い(それまでは互いに管領としての立場を認めず、謙信は北条家のことを「伊勢」と呼び、北条は上杉謙信のことを「長尾」と呼んでいた)。
 天下統一中心史観への反省から、関東における騒乱も室町時代の一つの権力闘争のあり方であることを規定し、その中で上杉対北条の戦いがどのような意味を持つかについて史料に基づき丹念に描かれており、戦国マニアにはたまらない一冊である(一般の人はここまで読む必要はないであろう)。

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