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2020年2月 5日 (水)

読書日記「水底の女」

 ハヤカワ文庫。レイモンド・チャンドラー。村上春樹訳。

 村上春樹訳のフィリップマーロウシリーズの最後の巻である。
 ハードカバーでも読んだのだが、文庫版が出たので文庫版で再読した。
 村上春樹訳のマーロウものは、全て、ハードカバーも買って、文庫版も購入して再読している。

 妻が失踪したので探して欲しいとの依頼を受け、マーロウは各地で聞き込みをする。
 妻が居たはずの人里離れた湖のキャビンを訪れたマーロウは湖の底に水死体を発見する。
 もう一人の女性も絡んできて、愛憎劇が描かれる。

 村上春樹があとがきで書いているとおり、村上春樹訳のマーロウものの最後の作品である。
 村上春樹自身、これで訳するものがなくなったして、チャンドラーロスになっていると書いているが、私自身もそうである。
 清水俊二さんの訳もよかったが(こちらも全巻持っている。ただし、マーロウが長編で初登場した「大いなる眠り」のみは版権の関係で清水俊二さんは訳せていない。)、はしょられているところもあったことが村上春樹訳で分かる。
 私は村上春樹訳の方が好きである。原典に忠実というところがあり、確かに、「なんでここまで情景を描写する必要があるんだ」と思わなくもないが、それはチャンドラーがそう書いているからであり、これは好みの問題もあるので、清水訳が最高だという人もいるだろう。

 個人的には、途中までチャンドラーが書いた「プードル・スプリングス物語」と、マーロウが主人公の短編はあるので、村上春樹氏にそちらも訳してもらいたいところである。
 これは、マーロウという不世出の主人公が好きかどうかというところに関わるので、万人受けはしないとは思うのだが、私はチャンドラーのマーロウものが、全ての小説の中でトップクラスに好きである。
 英語ができないので、原典も買ってはみたものの、少し読んで諦めたのだが、いつか原典で読んでみたい。

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