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2020年4月10日 (金)

弁護士と出世

 検察官の同期などは部長や次席検事などになって、検察庁内で偉くなっている。
 彼らから聞いたところでは、「現場にはもう長いこと立っていない」というのである。
 取調を直接したり、公判に立ち会うことがないということである。

 弁護士の場合、よほど大きい事務所の所長でない限り、事務所の経営(マネージメント)だけしていればよいという弁護士は少数で、ほとんどは実際の事件を担当して裁判にも行き、依頼者と打合をしている。
 仕事が好きというところもあるが、私の元ボスはもうすぐ弁護士50年だが、未だに普通に若い頃と変わらず事件をされている。
 もちろん私も同様である。

 若手の弁護士から、25年くらい経つと調停に行ったり裁判で尋問などしないと思っていたと言われたが、そんなことはなく、普通に身体と頭が元気であればずっと仕事をしているのが弁護士という職種である。

 弁護士は1級弁護士とか2級弁護士はないし、また、弁護士同士は対等であるので、検察庁のように部長や次席というものもない。
 元々弁護士になる時にそうした出世には興味がないから弁護士になっているというところもある。

 あるとすれば、弁護士会の役職につくことで、他の弁護士との差をつけるしかないのだが、私自身にはそういうところでどうこうしようというつもりもない。会長になりたいとも思わない。現在日弁連の公設事務所・法律相談センター委員会の委員長をしているのも成り行きでそうなっただけで、委員長になりたいから委員会に行っていた訳でもない。
 もう亡くなられた大先輩の弁護士に、「会長になりたくなるもんですか」と聞いたことがあるが、その大先輩は、「情けないことに、しようもない同期から会長に就任したというハガキがきたりすると、腹が立つんや。やっぱり他の人と比べてしまうんやな。そんなことからかけ離れて弁護士になったつもりやけど、人間、そういう気持ちが抑えられないもんや。」と言われていた。
 私には現在のところそうした気持ちはないので、弁護士会の役職につくことが出世というなら、特に出世したいという気持ちもない。

 日々事件をやるのみである。

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