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2020年5月12日 (火)

読書日記「伊藤一刀斎」

 光文社時代小説文庫。戸部新十郎。

 現在の剣道にもつながる一刀流を創始した伊藤一刀斎の生涯を描いた長編。上下巻。
 伊藤一刀斎の生涯はほぼわかっておらず、御子神典膳が弟子で、善鬼という兄弟子との戦いに勝ち、一刀流の後継者となり、小野次郎右衛門忠明と名を変えて、徳川宗家の兵法師範代となったことくらいが史実とされる(これも怪しいという説もある)。
 一刀斎は生没も出生も不明だが、小野次郎右衛門忠明は柳生高弟4人に一度に打ちかからせて手玉にとったという逸話もあり、直弟子がそれほど強かったということから、戦国時代から江戸初期にかけて、最強の剣客の1人とされている。
 戸田流の鐘巻自斎が師匠とされ、生涯33度の対決で一度も負けなかったとされているが、その詳細は不明である。

 不明ということになると、小説としては何もないところから作り上げないとダメであるが、戸部新十郎は縦横無尽に伊藤一刀斎の生涯を想像した。剣豪小説好きにはたまらない一作である。

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