« 椅子 | トップページ | 連休中の当事務所の執務について »

2021年4月28日 (水)

相続事件の経済的利益の算定

 弁護士の着手金・報酬を計算する時には、通常はその事件の経済的利益を基準とする。
 1000万円の支払を求める事件では、着手金は5%+9万円に消費税、報酬は10%+18万円となるのが多いであろう(独占禁止法の観点から、旧報酬基準は廃止され、各事務所で独自の報酬基準を置いておかないといけないようになったが、多くの弁護士は廃止された旧報酬基準の内容のままであることが多い。)。
 旧報酬基準では、遺産分割請求事件の経済的利益を算定する際には、以下のとおりとされていて、私の事務所も同様である。「対象となる相続分の時価相当額。ただし、分割の対象となる財産の範囲及び相続分について争いのない部分については、その相続分の時価相当額の3分の1の額」。
 基本となる考え方は、遺産分割では遺言などがない限り、法定相続分が各相続人に認められているため、必ず確保できるものであるから、費用が高額になりすぎることを防止するためではなかろうかと思っている。
 私などは旧来型弁護士なので、相続事件で争いのない部分は1/3にするのが当然と思っていたのだが、若い弁護士だと、「1/3にするのは知らなかった。普通にそのまま計算してもらっています。」という話を聞いた。
 その話を聞いたあと、他の事務所のホームページをいくつか見たところ、1/3にせずに費用を計算することを前提にしている事務所が割合あるようである。
 ある依頼者の法定相続分が3000万円の事件の場合、以下のとおりである。
 割合は、旧報酬基準で計算している(いずれも税抜)。
 【3分の1にした場合の着手金・報酬】
  着手金:1000万円×0.05+9万円=59万円
  報酬金:1000万円×0.1+18万円=118万円
  合計:177万円
 【3分の1にしない場合の着手金・報酬】
  着手金:3000万円×0.05+9万円=159万円
  報酬金:3000万円×0.1+18万円=318万円
  合計:477万円
  当然のことではあるが、概ね、3分の1にしない場合と比較すると、そのままの相続分で計算した場合には、3倍に近い金額となる。
 事案によって、争いのない部分がどこかというところは中々決しがたいところもあるが、旧報酬基準は撤廃されたものの、旧報酬基準と比較して弁護士費用があまりに高額になる場合には、委任契約書を締結していたとしても、懲戒となる場合がある。
 1/3にしない場合がこれに該当するかは不明であるが、相続事件は、依頼する事務所によって、費用がかなり変わる時代となっているのかもしれないので、相続事件を依頼される時には、この1/3基準にするかどうかも見ておかれた方がよいであろう。

 以上です。

|

« 椅子 | トップページ | 連休中の当事務所の執務について »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 椅子 | トップページ | 連休中の当事務所の執務について »