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2022年11月 4日 (金)

読書日記「とめどなく囁く」

 幻冬舎文庫。上下巻。桐野夏生。

 筆者の本は年に何冊か読む。
 人間の暗い部分を出してくるので、読んだあと、ずーんと気持ちが落ち込むのだが、物語の持つ力でしばらくすると、「ずーん」となるのは分かっているのだが、また読みたくなってしまう。
 文庫の新刊として出ていたので読んだ。

 海釣りに出たまま行方不明となった主人公の夫。そのまま死亡認定がされ、主人公は妻を亡くした歳の離れた夫と再婚する。
 元夫の母親は未だ息子の嫁としての扱いをされ、歳の離れた夫の娘からの誹謗中傷を受ける。
 歳の離れた夫との生活に対する苛立ち。
 唯一の親友と思っていた弁護士からも挑発的な言葉が投げられる。
 そんな時に、元夫に似た姿を見たという話が出てくる。また、元夫の母に無言電話がかかってきているという。

 元夫は生きているのか。生きているとして、なぜ姿をみせないのか。
 あるいはただのそら似で、無言電話もたまたまなのか。

 主人公は元夫が何を考え、何をしていたのかを知ろうとする-。

 人の悪意が交錯する佳作である。

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