美貌の相談者
相談者の名は、山名恵子といった。年齢は30歳。私は早川さんから相談票を受け取り、名前と年齢を見ると、相談者が座っているとおぼしきところに歩いていった。
弁護士会の受付の南側のソファーに一人だけ座って下を向いている女性が居たので、私はそちらに歩いていった。下を向いているので、顔は見えない。
髪の毛は少し茶色に染めており、肩より少し長い程度で切りそろえてあった。ゆるやかに毛先が内側にカールしており、手もとの肌の色を見ると、色は抜けるように白かった。弁護士会に相談に来るのはスーツで来ないといけないと思ったのか、薄い半袖のベージュのスーツ姿だった。下はタイトスカートである。まじめな女性なのだろうか。あるいは普段からこうなのだろうか。
私は、「山名さん?こちらの相談室にお越しいただけますか?」と出来るだけ優しく聞こえるように、そしてあまり大きくない声で言った。弁護士を15年以上もすると、こうしたねこなで声も出せるようになるのだ。
私の声は低く、通りがよいと言われるが、そのためにきつく聞こえることがあるようであり、依頼者に妙な緊張感を与えないために、多少ソフトな声であれば作れるようになっていた。
そうしたところ、やはりその女性は山名恵子であったようで、驚いたようにぱっと立ち上がった。
立ち上がったところを見ると、背は私より10センチ低いくらいと見たが、その顔を見て思わず私は息を呑んだ。
私は後にも先にも、あれほど美しい女性を見たことがなかったからである。
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